トクヨクと三多摩――立川・町田・八王子から夜の呼び名を読む
「トクヨク」という呼称や三多摩という地域名を手がかりに、広告上の呼び名と風営法上の公的な営業区分の違いを構造的に読み分けるコラム。
呼称と公的な区分は一致しない
夜の街で「トクヨク」という呼び名を見かけたとき、その文字だけで浴場設備や接客内容、警察への届出区分まで判断することはできない、というのが僕の結論です。今回の問いは、この呼び名だけで営業実態を判断できるのか、という点に尽きます。
なぜそう考えるのか、理由は次の三点にあります。
- トクヨクの公的な統一定義は確認できていない(広告媒体の使用例は公的定義の証明になりません)
- 公的な営業区分は設備の構造や役務で明確に分かれている(警察の届出を看板の文字だけで推し量ることはできません)
- 地域名と営業実態を結びつける根拠がない(文字の響きだけでその土地の夜を括るのは安直です)
実は、警察が公表している店舗型性風俗特殊営業の一覧を見ても、「トクヨク」という区分は存在しません。警視庁の一覧では、浴場業の施設に個室を設ける等の1号営業と、個室を設けて接触する役務を提供する営業で1号に該当するものを除く2号営業とが明確に区分され、無店舗型の派遣型ファッションヘルスも別の項として整理されています 1。つまり、看板や広告にどんな通称が並んでいようと、その店が法令上1号なのか2号なのか、あるいは無店舗型なのかは、呼称から自動的に判断できない仕組みになっています。警察の方々が管理する法定の線引きを、宣伝媒体の呼び名と混同してはいけないのだと思います。

呼び名、設備、制度上の区分を分けて読むためのイメージ。
多摩地域の広がりと夜の言葉
看板の文字から実態を決めつける危うさは、多摩地域の夜を語る際にも現れます。この記事で取り上げる立川、町田、八王子の3市が、多摩地域のすべてというわけではありません。東京都の多摩の魅力発信プロジェクトは30市町村を紹介しており、立川市、町田市、八王子市はその広がりの中に含まれる一部にすぎないからです 2。資料の裏付けもないまま、3市だけを抜き出して客層や移動方向、料金相場といった営業実態を語ることはできません。
看板は、店のすべてを説明する仕様書じゃない。 その呼び名だけで中身まで分かった気になると、読み違える。 名前を消費しているようで、実は名前の曖昧さに振り回されている。 これ、呼び名に実態を期待する側の錯覚です。
俺は、夜の街を言葉の響きだけで分かった気になるのが一番危ういと思うな。トクヨクという文字に何を連想しようと、公的な届出区分や営業実態は別の場所にあります。言葉の珍しさに目を奪われず、行政の制度や地域の正確な広がりを一つずつ切り分けて確認する。夜の呼び名と向き合うには、そのくらいの距離感が必要なのだと思います。

